
2018年も半分が過ぎ、本格的に夏がはじまりました。今年は例年以上に暑い夏となりそうで、各地で高温を記録、熱中症にならないように懸念されています。体力的にも夏バテしないようにしっかりと食べてよく寝る規則正しい生活を送り、体調に気を付けて生活していきたいところです。
夏で体力をつけると言えば、もちろん鰻!!
うな丼やうな重、ウナギのかば焼きといったうなぎ料理はタレのいい匂いが食欲を惹きつけ、食欲がなかった状態を嘘のように体力と精力をつけてくれる食べ物です。日本には土用の丑の日に食べるという風習が広まっていますが、今年もそういった時期に食べようと計画している人も多いのではないでしょうか。
しかし、近年、鰻がとても高いと言われているようにどんどん値段が高騰していっているようです。毎年食べようとする度に値段が高くなってないか?といった事を思ってしまう人も多いかもしれません。
一体鰻が高いと言われる原因は何にあるのか?これからも鰻の値段は上がり続けるのか?本記事では鰻の値段が高い理由について気になったので調べてみました。
目次
鰻の値段が高いとされる原因は?
そもそも鰻の値段が高いとされる原因には以下のようにいくつかの要因が考えられます。
1.鰻を捕獲するのにお金がかかること
2.鰻を流通させるのが困難なこと
3.鰻の希少価値が高いこと
大きく分けると上記3つのような理由を想定することができるのですが、1と2についてはどんな魚でも同じようにお金はかかりますし、鰻以上に捕獲が難しい魚や保存が難しい魚というのはたくさんいるので、高騰する理由としては弱そうです。
よっぽど捕獲してからの保管に気を使って特別な保存方法を要するなら別ですが、そういった話は聞きませんよね。
やはり主な高騰理由となっているのは3の鰻の希少価値が高いことにあるようです。
では、なぜ鰻の希少価値が高いのか?
その原因は水産省が発表しているレポートを見るとよくわかりました。
鰻の漁獲量は年々減少!絶滅危惧種として指定されている
水産省の発表によると二ホンウナギの稚魚であるシラスウナギの採捕量が2000年代に入ってしばらくは横ばいを維持していたものの、2010年から3年連続で漁獲量が大きく下がったことから「ウナギ緊急対策」を定めたそうです。
2000 | H12 | 16 |
2001 | H13 | 14 |
2002 | H14 | 19 |
2003 | H15 | 24.4 |
2004 | H16 | 22.5 |
2005 | H17 | 10.1 |
2006 | H18 | 27.5 |
2007 | H19 | 22.2 |
2008 | H20 | 11.4 |
2009 | H21 | 24.7 |
2010 | H22 | 9.2 |
2011 | H23 | 9.5 |
2012 | H24 | 9.0 |
2013 | H25 | 5.2 |
2014 | H26 | 17.4 |
2015 | H27 | 15.3 |
2016 | H28 | 13.6 |
2017 | H29 | 15.5 |
上記の表を見ると確かに2010年頃から漁獲量が3期連続で落ち込み、2014年頃から少し回復したように見えますよね。
しかし、この回復したように見える数字も日本政府としては一時的なものにしか過ぎず、今後の対策は急務として対策を練っているようです。
ちなみに二ホンウナギというのが日本でよく食用とされている鰻の種類のことで、その稚魚がシラスウナギとなります。シラスウナギというのを捕獲し、育てる事で食用の鰻として鰻店やスーパーに流通していくという流れになるのですね。
ただ、シラスウナギをたくさん捕獲してしまうと自然の中で育つ二ホンウナギは当然少なくなっていき、産卵も期待できなくなるのであまりに捕獲するのも考え物というわけです。
この二ホンウナギという鰻を捕獲しているのは日本以外にも中国、チャイニーズ・タイペイといった国があり、これらの国同士でもウナギの保護に向けて共同声明を出しているようです。
ちなみに平成26年6月、ニホンウナギを絶滅危惧IB類として認定したとして国際自然保護連合(IUCN)は発表をしています。
この絶滅危惧IB類というのは絶滅危惧IA類の次に近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種と認識されているというランク付けですので、かなり危険な位置にいると言えます。
このまま絶滅危惧IA類にランク付けされてしまうと本当に近い将来に野生からいなくなるという位置づけになってしまうので、早急に対策を打つ必要があります。ちなみに絶滅危惧IB類として同じ位置づけにいる動物としてラッコやトキ、ジャイアントパンダが位置づけされていますので、かなり危険な状態だということがわかると思います。
ラッコやトキ、ジャイアントパンダは食用として育てられていないにも関わらず絶滅危惧種なことを考えると二ホンウナギを食べてよいものか考えてしまいますよね。
輸入量も大幅に減少!鰻の供給量自体が不足!
ヨーロッパ方面で捕獲できるウナギはヨーロッパウナギ、アメリカ方面でとれる鰻はアメリカウナギと呼ばれ、こちらの鰻は日本へは輸入という形で供給されています。
こちらの鰻についても以下の表のように生産量、養殖量が減少している事以上に輸入量も減少されているということから鰻自体が捕獲できておらず供給量が減っている事がわかります。
西暦 | 漁業生産量 | 養殖生産量 | 国内生産量 | 輸 入量 | 合計 | |
2000 | H12 | 765 | 24,118 | 24,883 | 133,211 | 158,094 |
2001 | H13 | 677 | 23,123 | 23,800 | 133,017 | 156,817 |
2002 | H14 | 612 | 21,207 | 21,819 | 120,472 | 142,291 |
2003 | H15 | 600 | 22,000 | 22,600 | 94,573 | 117,173 |
2004 | H16 | 618 | 21,791 | 22,409 | 107,864 | 130,273 |
2005 | H17 | 483 | 19,744 | 20,227 | 77,590 | 97,817 |
2006 | H18 | 302 | 20,733 | 21,035 | 79,387 | 100,422 |
2007 | H19 | 289 | 22,644 | 22,933 | 80,353 | 103,286 |
2008 | H20 | 270 | 20,952 | 21,222 | 43,923 | 65,145 |
2009 | H21 | 263 | 22,406 | 22,669 | 46,179 | 68,848 |
2010 | H22 | 245 | 20,533 | 20,778 | 53,065 | 73,843 |
2011 | H23 | 229 | 22,006 | 22,235 | 34,061 | 56,296 |
2012 | H24 | 165 | 17,377 | 17,542 | 19,660 | 37,202 |
2013 | H25 | 135 | 14,204 | 14,339 | 18,258 | 32,597 |
2014 | H26 | 112 | 17,627 | 17,739 | 20,197 | 37,936 |
2015 | H27 | 70 | 20,119 | 20,189 | 31,156 | 51,345 |
上記のように海外からの輸入量は国内での捕獲量以上に減少が激しいので、将来的には輸入自体ができなくなるとみてよいでしょう。ちなみにヨーロッパウナギは絶滅危惧IA類に位置づけされており、近い将来必ず自然界から消滅してしまうと言われているので、もはや輸入できている事自体が奇跡とも言えそうです。
何にせよ、近い将来には輸入自体ができなくなるでしょうし、ヨーロッパでも漁獲自体が禁止されるかもしれません。
絶滅危惧種の鰻は養殖できない?養殖できない理由とは?
上述したように絶滅危惧種としても指定されている鰻。
そこまで危ない状態なのに食べていても大丈夫なのか?という懸念もありますが、そもそも鰻の養殖ってやってなかったけ?という疑問も残ります。
そこで鰻の養殖についても調べてみるとやはり鰻の養殖は実現できていないようです。
現段階では鰻の養殖はシラスウナギを捕まえて育てることでしか鰻を育てられていないため、卵を産ませて育てる完全養殖が実現していません。
そのため、成長途中であるシラスウナギを捕まえて育て上げ、ニホンウナギとなるまで面倒を見るということを繰り返すことで、天然のニホンウナギが育たない環境を作ってしまっているのです。
大人になるシラスウナギが少なくなると自然界で卵を産むニホンウナギも少なくなる。その結果、卵から生まれてくる稚魚も少なくなるので、当然そこから育つシラスウナギも少なくなります。
そこからまた捕獲されるシラスウナギが出てくるので、ますます少なくなっていってしまうということが起きてるのです。
じゃあニホンウナギに子供を産ませて育てればいいとなるのですが、そこまで鰻の生態がわかっていないため、完全な養殖ができないというのが現状です。
実際に完全養殖するには生態がわかっていない鰻の中でも特に以下の問題をクリアしなくてはなりません。
・普通に育てると全てオスとなる
・性別を決める要因がわかっていない
・性別に影響を与えるとされている環境が特定されていない
普通に育てると全てオスになってしまう鰻からメスが産まれる理由を突き止めないと完全養殖は実現しません。
鰻の高騰は防げないのか?絶滅の運命からは逃げられないのか?
上述したように完全養殖ができない鰻。
このまま高騰を続け、絶滅を迎えるしかないのか?
という至上命題に対して、立ち向かっている世界の研究者。
ここに白羽の矢を立てようとしているのが近大マグロで有名な近畿大学です。
マグロの次は鰻だとして、日夜研究を進めているそうです。
そして、その前進として近大ナマズというのを開発しています。
味や食感をなるべく鰻に近い味にしたナマズを鰻の代わりとして食用に育てるという研究をし、食感、味ともにナマズが鰻に限りなく近い味になったようです。
この近大ナマズは東京、大阪にある近大直営店で二千円前後で提供されているとのこと。時期は選ぶようなので事前に問い合わせは必須ですが、将来的には500円前後で提供を目指すということで、鰻に代わる食材としても期待されています。
まとめ
絶滅危惧種となっている鰻。
そんな鰻を食すということは本当に自然に感謝しなければなりませんし、食べれば食べるほど絶滅に近づいているとも言えます。
そんな状況を何とかしようとしている研究者や近大の方々には何年かかってもいいので何とか鰻を絶滅の危機から救ってほしいですね。